エラボトックスは何単位がベスト?適切な注入量の目安と単位の決まり方を歯科医師が解説

「エラボトックスって、何単位打てばいいの?」「クリニックによって単位の表記がバラバラで、何が普通かわからない」「単位が多いほど効果があるんですよね?」エラボトックスの単位について、こうした疑問をお持ちの方は少なくありません。
実はエラボトックスにおける「単位」は、ただの薬の量を表す数字ではなく、筋肉の動きをどれくらい抑えられるかという「効果の強さ」を示す指標です。そのため、製品が違ったり咬筋の発達具合が違ったりすると、最適な単位数は変わってきます。
この記事では、渋谷区千駄ケ谷の北参道歯科クリニック院長・大野寿子が、エラボトックスの単位とは何かという基本から、注入量の目安・単位による効果の違い・適切な単位の見極め方まで、医療広告のルールに沿いながら丁寧に解説します。
監修者
北参道歯科クリニック 院長/歯科医師 奥羽大学歯学部卒業後、一般歯科・小児歯科・審美歯科を幅広く担当。訪問歯科医として10年間勤務後、都内複数の医療法人の分院長を経て、2021年7月に北参道歯科クリニックを開業。 日本顎咬合学会・日本顎顔面美容医療協会会員・日本摂食嚥下リハビリテーション学会所属。

エラボトックスの「単位」とは何か
ボトックス治療では、注入する薬剤の量を「単位(ユニット)」という表現で管理します。「cc」や「mg」ではなく単位を用いる理由を、まず押さえておきましょう。
エラボトックスで使われるボツリヌストキシン製剤は、ボツリヌス菌から抽出されたタンパク質を有効成分とする天然由来の薬剤です。粉末状の製剤を生理食塩水で溶かして注入するため、注入する液体の量(cc)と実際に効果を発揮する薬剤の量が必ずしも一致しません。同じ1ccでも、希釈の濃度によって効果が大きく異なるのです。
そこで使われるのが「単位(力価)」という考え方です。これは「特定の筋肉の働きを抑制するために必要な薬剤の強さ」を表す指標で、単位数が大きいほど効果が強く、影響範囲も広くなる傾向があります。
このため、「何ccか」ではなく「何単位か」で施術内容を確認することが、適切な治療を受けるうえで重要なポイントになります。
エラボトックスの基本の単位数:40単位(片側20単位)

エラボトックスにおける一般的な基本注入量は、左右合計で40単位(片側20単位)とされています。これは日本国内で厚生労働省の認可を受けているボトックスビスタを基準とした目安です。
ただし、左右の咬筋には発達の差があることが一般的なので、実際には医師が左右それぞれの筋肉量に応じて注入量を微調整します。「片側20単位ずつ」と機械的に分けるのではなく、咬筋の触診で左右の発達度合いを確認した上で、左右で量を変えることが多いのが実際です。
軽度のエラ張り・初めてのエラボトックスを希望される方には、この40単位前後の量から始めて、効果の出方を見ながら次回以降の量を調整するのが基本的な進め方になります。
倍量の80単位が検討されるケース
咬筋が大きく発達している方の場合、40単位では十分に筋肉を抑制できないことがあります。そうしたケースでは倍量である80単位(片側40単位)の注入が検討されます。
倍量が必要となりやすいのは、歯ぎしり・食いしばりの癖が強い方、硬いものを頻繁に噛む習慣がある方、もともと男性で咬筋が女性より発達している傾向にある方、過去のエラボトックスで満足な変化が出なかった方などです。
ただし、「とにかく多く打てば白く効くだろう」という発想で安易に倍量を選ぶことは推奨できません。後述しますが、過剰な注入には独自のリスクがあるため、咬筋の発達具合を医師が触診で評価した上で必要な量を決めることが重要です。
単位数別・期待できる変化のイメージ
施術内容によって個人差はありますが、単位数別の変化のイメージは以下が目安になります。
| 単位数(両側合計) | 主な対象 | 変化のイメージ |
| 20〜40単位 | 軽度のエラ張り・自然な変化希望 | ゆるやかにすっきり |
| 50〜80単位(倍量含む) | 中度〜強めのエラ張り・歯ぎしり対策 | はっきりとフェイスラインが変化 |
| 100単位以上 | 重度のエラ張り | しっかり抑制/噛みにくさのリスク増 |
上記はあくまでも一般的な目安です。咬筋の発達度合い・骨格・目的によって最適な単位は個人差が大きいため、医師による触診・診断が前提となります。
単位は「製剤の種類」でも基準が変わる

エラボトックスに使われるボツリヌストキシン製剤には、いくつかの種類があります。代表的なものとしては、アメリカ・アラガン社のボトックスビスタ(厚生労働省認可)、イギリス製のディスポート、韓国製のニューロノックス・メディトキシン、ドイツ製のゼオミンなどです。
ここで重要な点として、これらの製剤は国や製造元によって「単位」の力価計測方法が異なるため、同じ40単位でも実際の効力に違いがあることがあります。安価な製剤で「100単位プラン」が提示されていても、実質的にはアラガン社製の40単位相当ということもあり得るため、単位の数字だけで料金を比較するのは適切ではありません。
施術を受ける際は、「どの製剤を使うのか」と「その製剤での適正単位はいくつか」をセットで確認することをおすすめします。
注入単位による効果の違い
「単位数を多くすれば効果も強く・長く持続するの?」というご質問もよくいただきます。これに関する正確な情報を整理しておきましょう。
注入量が多くなれば、筋肉を抑制する力は強くなります。また、薬剤が効く範囲も広くなる傾向があります。咬筋のような大きな筋肉を対象にする場合、ある程度の単位数が必要なのはそのためです。
一方で、効果の持続期間は単位数とは比例しません。基本の40単位でも倍量の80単位でも、効果が薄れていくスピードはそれほど変わらないとされています。「単位を増やせば持続期間が延びる」という考え方は誤解です。
注入する単位を決めるときは、「どこまで効かせたいか」「どこまで筋肉を抑制したいか」が判断軸であり、「どれだけ長く効かせたいか」ではないということを理解しておくと、医師との相談がしやすくなります。
単位が少なすぎる場合のデメリット
エラボトックスを受けたのに「効果を感じない」という方の中には、必要な単位数に対して注入量が不足していたケースがあります。
注入量が少なすぎると、咬筋を十分に抑制できず、期待した変化が出ません。「効果が出ないからもう一度すぐに打とう」と短い間隔で再注入すると、ボツリヌストキシン製剤に対する抗体が形成されるリスクがあるとされています。抗体ができると、次回以降のエラボトックスで効果を感じにくくなる可能性があります。
最初の施術で適切な単位を見極めることが、後々のトラブル回避につながります。
単位が多すぎる場合のデメリット
逆に、必要量を超えて注入することにも明確なリスクがあります。
注入量が過剰になると、咬筋以外の周囲の筋肉(笑筋など表情に関わる筋肉)にも薬剤が広がってしまうことがあります。これにより、笑ったときに口角が上がりにくい、表情がこわばる、口元が動かしにくいといった違和感が出る場合があります。
また、咬筋の働きが必要以上に弱まると噛む力が大きく低下し、食事のしにくさや顎関節への負担変化、頭痛・肩こりなどにつながることもあります。
過度な単位による咬筋の縮小は、フェイスラインを支えていた組織のバランスを崩し、頬がこけたように見えたり、皮膚のたるみが目立つようになるリスクもあります。「とにかく細くしたい」と希望して大量に打つことが、かえって「老けて見える」結果につながるケースは少なくありません。
適切な単位を見極めるためのポイント

エラボトックスで満足のいく仕上がりにするには、自分にとって適切な単位を選ぶことが鍵になります。以下の観点で医師と相談してみてください。
1. 咬筋の発達具合を触診で確認
奥歯を噛み締めたときにエラの外側が硬く盛り上がる感覚がある方は、咬筋が発達している可能性が高く、エラボトックスの効果が出やすい傾向があります。経験のある医師は触診で咬筋の厚みを確認し、必要な単位数の目安を立てます。
2. 目的を明確に伝える
「自然にすっきりしたい」のか「がっつり小顔にしたい」のか「歯ぎしりを治したい」のかによって、適切な単位は変わります。希望する仕上がりを具体的に伝えることが、最適な単位設定につながります。
3. 初回は控えめからスタートする
「足りなければ追加できるが、入れすぎは戻せない」のがボトックスの特徴です。初回は無理に倍量を希望せず、基本の40単位前後から始めて、2〜3週間後の経過を見て次回の量を決めるのが安全な進め方です。
4. 同じクリニック・同じ医師で継続管理する
エラボトックスは継続することで咬筋が落ち着き、必要な単位数が徐々に減っていくことがあります。同じ医師に継続的に診てもらうことで、経過を踏まえた最適な単位調整が可能になります。
5. 単位の内訳をしっかり聞ける医師を選ぶ
「シングル」「ダブル」など曖昧な表現ではなく、「○単位」と数字で説明してくれる医師・クリニックを選びましょう。他院でフォローが必要になった場合も、明確な単位記録があれば継続性のある治療が可能です。
歯科医院でエラボトックスを受ける場合の単位設計
エラボトックスを歯科医院で受ける場合、単位設計に独自の視点が加わります。歯科医師は咬筋・咀嚼筋の解剖と機能に精通しているため、咬筋の状態だけでなく噛み合わせ・歯ぎしり傾向・顎関節の状態まで総合的に評価できます。
特に「歯ぎしり・食いしばり対策」を目的としたエラボトックスの場合、咬筋への効果がしっかり出るだけの単位を確保しつつ、噛む機能に過剰な影響を与えない適切な範囲で設計することが重要です。歯科ならではの口腔機能への配慮が、長期的に安心して受けられる施術につながります。
北参道歯科クリニックでのエラボトックス

当院では、ボトックス認定医である院長が咬筋の触診と噛み合わせの確認を行った上で、患者さま一人ひとりに合わせた単位設計をご提案しています。「自然にすっきりしたい」「歯ぎしりを改善したい」「がっつり小顔にしたい」など、目的に合わせて適切な単位を選びます。
費用については、注入する単位数や使用する製剤によって異なるため、カウンセリングで詳しくご案内します。
【院長コメント】単位の数字よりも「あなたに必要な量」を大切に
「『何単位打てばいい?』というご質問をよくいただきますが、正直な答えは『あなたの咬筋を診てから決めましょう』です。同じ40単位でも、咬筋が小さい方には十分な変化が出る一方で、発達の強い方には足りないこともある。逆に、安易な倍量で過剰になれば噛む力や表情に影響が出ます。歯科医師の立場から咬筋を触診し、噛み合わせや歯ぎしり傾向まで確認した上で、その方に合った単位を提案するのが私たちの役割です。気になることはカウンセリングで遠慮なく聞いてください。一緒に最適な単位を見つけていきましょう。」
まとめ:エラボトックスの単位は「咬筋の状態×目的×製剤」で決まる
エラボトックスにおける基本の注入量は40単位(片側20単位)で、咬筋の発達が強い方には倍量の80単位が検討されます。ただし、単位はあくまでも目安であり、咬筋の発達具合・骨格・希望する仕上がり・使用する製剤の種類によって最適な数字は変わります。
「単位が多い=効果が強い・長持ち」というのは誤解で、過剰な単位は頬こけ・たるみ・噛む力の低下・表情の違和感などのリスクを高めます。逆に少なすぎても効果不足や抗体形成のリスクがあるため、自分にとって適切な量を医師の触診と診断のもとで見極めることが、納得のいく仕上がりへの近道です。
渋谷区千駄ケ谷の北参道歯科クリニックでは、ボトックス認定医による咬筋の触診とカウンセリングを通じて、一人ひとりに合った単位設計をご提案しています。「自分には何単位が合うのか知りたい」「歯ぎしりにも効くのか」など、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)
Q1. エラボトックスは何単位が標準的ですか?
両側合計で40単位(片側20単位)が一般的な基本量とされています。咬筋の発達が強い方は倍量の80単位が検討されることもあります。ただしこれはあくまでも目安で、咬筋の状態によって医師が個別に判断します。
Q2. 単位が多いほど効果は長く持続しますか?
注入量と持続期間は比例しません。基本量でも倍量でも、効果の持続期間は3〜6ヵ月程度で大きく変わらないとされています。単位を増やすのは「効果の強さや影響範囲を広げたいとき」であって、「長持ちさせたいとき」ではありません。
Q3. 安いプランで100単位と書いてあるクリニックを見ました。これは多いのですか?
製剤の種類によって単位の基準が異なるため、数字だけでは判断できません。アメリカ・アラガン社の製剤と韓国製の製剤では、同じ「単位」でも実際の効力が異なることがあります。「どの製剤を使うのか」「その製剤での適正単位はいくつか」をセットで確認しましょう。
Q4. 初回は何単位から始めるべきですか?
「足りなければ追加できるが、入れすぎは戻せない」のがボトックスの特徴です。初回は基本量(40単位前後)から始めて、2〜3週間後の経過を見て次回の量を調整するのが安全な進め方です。経験ある医師ほど初回控えめを推奨します。
Q5. 歯科医院と美容クリニックでは単位の決め方が違いますか?
最終的な「単位の決め方」自体は変わりませんが、評価の視点が異なります。歯科医師は咬筋の触診に加えて噛み合わせ・歯ぎしり傾向・顎関節の状態まで合わせて診ます。歯ぎしり対策と小顔効果の両方を目的にする方には、歯科でのエラボトックスが特に向いています。

監修:大野 寿子
北参道歯科クリニック 院長/歯科医師 奥羽大学歯学部卒業後、一般歯科・小児歯科・審美歯科を幅広く担当。訪問歯科医として10年間勤務後、都内複数の医療法人の分院長を経て、2021年7月に北参道歯科クリニックを開業。 日本顎咬合学会・日本顎顔面美容医療協会会員・日本摂食嚥下リハビリテーション学会所属。